10歳のダグラスは県警で2代目となるラブラドルレトリバーの警察犬だった。最も多く活躍するシェパードが担当者以外にはあまり懐かないのに比べ、ラブラドルは性格が温厚で集中力が高いのが特徴だという。
「中でもダグラスは、朗らかで扱いやすい犬でした」。同課の警察犬係員をまとめる赤坂一彦係長は、「でも正直、出来はあまりよくなかったんですよ」と笑う。
優秀な犬が数々の表彰を受ける中、ダグラスの受賞は一つだけ。「深夜に出動があると、ほかの犬は出番じゃなくても一緒に起きてしまうのに、ダグラスだけは寝ていました」。訓練員のアイドルのような存在だった。
10歳という年齢は人間では60歳ほど。足腰の衰弱が進み、現場を駆ける“同僚”に付いていけなくなった。10月での引退が決まっていた。里親も見つかり、ゆったりと余生を過ごすはずだった。
8月に体調が急変した。「暑さはもちろんですが、何だか気が抜けてしまったように見えました」と赤坂さん。現場や訓練に出向く頻度も減り、「動物の勘なんでしょうか、敏感に引退を察知していたようでした」。
死んだ今月15日はダグラスの担当者が、新たに補充される犬の担当へと移る日だった。鑑識課の池田光夫課長は、「人間の感覚だが、自分の役目は終わったとでもいうような最期だった」と振り返る。その日は月に1度の全体訓練。係員全員に見守られ、旅立った。
県警は今年、全国植樹祭、APECと近年にない大規模警備が重なり、各種訓練など警察犬も多忙を極める。テロなどの懸念もあるため、爆発物捜索にあたる「警備犬」の育成も急ピッチで進む。池田課長は「不器用でも一生懸命だったダグラスのためにも、もう一踏ん張りしなければ、と思っているはず」。全14頭、係員7人。今日も訓練に励む。
(神奈川新聞)
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切ないですね・・・特に太字の部分・・・何か感じるものがあったのでしょうか。きっと、あったはずです。
でも、ずっと現役でいることは無理ですし、静かで平和な老後を過ごして長生きして欲しい・・・という気持ちもよく分かります。
私がワンコの気持ちになって思うことは・・・ワンコたちには人間の都合や価値観は分かりません。ワンコたちにとって、どんな過酷な仕事をしていたとしても、どんな厳しい状況の毎日だとしても、何よりも何よりも大切で重要なのは、飼い主さん(ワンコがボスや家族と認めた相手)と共にいることです。
でも、盲導犬や警察犬など、人のために働いているワンちゃんたちは、ずっとワンオーナーというわけにはいきませんよね。
せめて引退後は、のんびりと家庭犬として過ごして欲しい・・・という願いはとてもよく分かります。それでもワンちゃんはずっと共に暮らしていた・働いていた飼い主さんの事を思い続けるのですよね・・・切ないですね。
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